生い立ち

　明治19年（1886年）11月12日、北津軽郡金木町朝日山に生まれた。明治39年12月陸軍気球隊に入り、43年軍曹で退役したが、徳川好敏大慰の推薦で、奈良原三次のもと操縦士として教育を受けることとなった。その練習機は奈良原式1号及び2号機であったが、いずれも同乗教官などはおらず、徳川大尉の口伝による教育が唯一のものであったから、技術の向上には、大変な努力を必要とした。
　明治45年4月、川崎競馬場で開催された有料公開飛行会で、白戸榮之助は奈良原式4号機「鳳号」を操縦して我が国民民間操縦士第1号の名声を得、続いて5月11日東京の青山練兵場で時の皇太子殿下（大正天皇）、皇孫殿下（昭和天皇）の台臨飛行を行って大成功を納めた。
　さらに5月末には奈良原三次の提案で千葉の稲毛海岸の干潟を利用した飛行場を本拠地として移動し、教官として伊藤音次郎を教育した。大正元年（1912年）10月から2年11月にかけては、「鳳号」で、中国・九州・四国・朝鮮・北海道・東北等全国で巡回飛行を行い、飛行機とはいかなるものかを全国に普及してまわった。
　大正5年12月、榮之助はそれまでの本拠地であった稲毛を離れ、千葉町（現、千葉市）寒川新宿に白戸飛行機練習所を開設しもっぱら飛行士の養成に努めた。
　その後、シベリア出兵による召集で、大正7年8月より8年2月まで千葉を留守にした。その間は、はつ夫人と一番弟子の高橋信夫により練習所は運営された。
　大正12年1月11日から開始された朝日新聞社主催の東西定期航空会には、白戸・伊藤両飛行機練習所の飛行機・飛行士が参加し、それまでの巡回飛行や飛行士育成のみだった状態からの発展を目指したが、2月22日の第7回目の飛行で榮之助の愛弟子島田武男飛行士が、吹雪に遭って箱根山中に墜落、殉職してしまい、さらに4月28日には榮之助が右腕とたのむ高橋信夫飛行士が、練習生の操縦で飛行中、操縦のミスから失速して登戸海岸（千葉市）に墜落して亡くなってしまった。
　このような状況から、大正12年10月に白戸榮之助は、航空界から引退することを決意した。
昭和13年3月23日没。

資料提供　金木町白戸栄之助研究会